まずは自分の矛盾に気づくことから|浜村ゼミ
2025/03/30
浜村ゼミ
「なんか俺、矛盾していることを言ってるな……」
3月27日、浜村ゼミを開催しました。
※このゼミは、中高生を対象に、「好奇心」「対話力」「当事者意識」を育むことを目的とした学びの場です。
この日は、年度末というタイミングを活かし、新学期に向けた「抱負」……というよりも、今の率直な“心境”を語り合う時間にしました。
高校2年生のA君は、来年度からはいよいよ高校3年生。進学か就職か、進路選択の岐路に立っています。彼の高校では、卒業後に就職する生徒も毎年20〜30%いるそうで、A君自身も迷っていました。
「早く働いて、お金を稼ぎたい。でも、若いうちにしかできない経験も積んでおきたいんだよね。」
揺れる気持ちの中で、A君はふと、こうつぶやきました。
「なんか俺、矛盾してることを言ってるな……」
でも、それは決して矛盾ではありません。どちらもA君の“本音”だからこそ、迷うのです。
対話を深めていくうちに、A君が“本当に好きなこと”の輪郭が少しずつ見えてきました。彼は、人に何かを教えたり、面倒を見たりすることに喜びを感じるタイプのようです。
私が理事を務める「松南志塾」では、子どもたちが経営を学び、地域イベントで実践する「子ども商店プロジェクト」を行っています。A君は小学生の頃からこのプロジェクトに参加し、今では高校生として後輩の指導役を担う立場です。
最近では、新たにスタートした大阪・京橋での「子ども商店プロジェクト」にも、中心メンバーとして関わることを決めました。その理由を尋ねると、彼はこう答えてくれました。
「もちろん経験も積みたい。でもそれ以上に、子どもたちの成長を見るのが楽しいんです。」
A君は、自分の中の“矛盾”に気づいたからこそ、自分の「好き」にもう一度立ち返ることができたのだと思います。この「矛盾に気づく」ということこそ、物事のすべてにおいて最初の一歩なのではないでしょうか。
いま私たちは、情報があふれる時代に生きています。SNSでは、他人の「キラキラした日常」が絶えず流れ、それを見て「自分もあんなふうになりたい」と思うこともあるでしょう。中には、「闇バイト」のように“楽して得する”といった情報も、若者の身近に存在しています。
だからこそ、安易な選択に流されず、本当に自分の幸せを願うなら、A君のように一度立ち止まり、心の奥にある「本当にやりたいこと」と向き合うことが大切です。その道のりは、簡単ではなく、苦しさや葛藤を伴うかもしれません。それでも、向き合うことから逃げてはいけない。
僕は教育に取り組む一人として、そして中高生たちの伴走者として、A君が自分だけの「確かなもの」にたどり着くまで、共に悩み、考え続けたいと思います。そしてその「確かなもの」が、いつか誰かのために活かされるよう、これからも学びの場を育んでいきます。